中国で日本人がVPNを利用すると反スパイ法により処罰されますか?中国どこでもWiFIなら?
2023年7月1日、中国で反スパイ法(原文:反间谍法、スパイ防止法と訳されることもあります)が施行されました。
2014年から同法律は施行されていましたが、今回の改正により、中国におけるスパイ行為の定義が拡大される等の修正が行わています。
今年2023年3月には大手製薬会社中国現地法人の日本人社員が反スパイ法違反の容疑で拘束されたこともニュース等で大きく取り上げられました。
今回の改正によって、同法によるスパイ行為の摘発がより強化される可能性があります。
この法律に関する詳しい解釈等については他サイトに譲りますが、弊社ジョイテルとして重要な中国におけるインターネットの利用の観点から解説をしたいと思います。
VPNは反スパイ法とは関係無い!真に認識すべきリスクは別にある
この反スパイ法施行に合わせて、弊社へ多く寄せられるようになった問い合わせが「中国で日本人がVPNを利用すると反スパイ法により処罰されますか?」です。
やはり、「いわゆるVPN」(ここでは中国から日本等のLINEやGoogle等を利用する暗号化通信の仕組みと定義します)が中国では認められた仕組みではないことは、日本人の皆様も理解していることであり、昨今話題の反スパイ法との関連についてかなり気にされていることも多いようです。
結論から述べると「VPNを利用することそのものは反スパイ法とは関係がありません。しかしながら、真に注意すべきはVPNを含む通信・インターネット等における利用内容(情報を発信する内容、閲覧する内容)」です。
これをお伝えすると、最初の文章の「VPNは反スパイ法とは関係無い」だけを捉えて安心してしまい、もう一つの重要な「利用内容」に関するリスクを忘れてしまう方が非常に多いので注意です。
(※追記 現に Google検索結果における本記事へのリンクでは「VPNは反スパイ法とは関係無い」の箇所だけが強調され、重要なリスクに関する内容が後回しになってしまっています。読んでいただく方に誤解を招かないようにGoogleに修正をお願いしたいところです、、)
まずは反スパイ法においてスパイ行為と定義される事項について正確に理解することが重要です。
反スパイ法第4条には以下のように記載されています。(原文をジョイテルが翻訳)
② スパイ組織への参加、エージェント任務の請負又はこれらに頼ること
③ 国家機密又は国家情報そのほかの国家の安全と利益に関する文書、データ、情報及び物品の窃取、偵察、買収、又は不法に提供する活動等
④ 国家機関、国家機密にかかわる組織又は重要情報インフラ等に対するサイバー攻撃、侵入、妨害、コントロール、破壊等を実施する活動
⑤ 敵のために襲撃目標を指示する行為
⑥ その他のスパイ活動を行うこと
実際のところを言えば、この第3項の「国家の安全と利益」や第6項における「その他のスパイ活動」が明確に定義されていないことから、中国側当局が恣意的に運用をすることが可能な状態です。
つまり、当局がその気になれば、中国国内におけるあらゆる全ての活動に対してこれはスパイ活動であると認定しうる可能性があるということです。
一般的にVPNと呼ばれるサービス、検索で「中国 VPN」等で見つかるサービスのほとんどは、中国では正式に認められたものではありません。
中国では通信関連のサービスを提供するためには厳格な許認可があります。
日本にも電気通信事業者と呼ばれる通信事業者に対する許認可制度がありますが、中国ではこれが厳格に運用されています。
中国に関わる方々の間では、VPNと言うと「中国から日本を含む海外へのインターネットへアクセスするための暗号化通信の仕組み」と認識されています。
しかしながら、VPN自体は通信ネットワークの世界では一般的な仕組みであり、主に拠点間を結ぶ通信手段として利用されています。皆様の会社等で、本社のサーバやクラウドへ他の拠点や自宅等のパソコンから接続するための仕組みと言えば何となくわかるでしょうか?本社のサーバに対してインターネットを通じて安全に通信を行う仕組みです。この仕組みを活用して、中国から日本を含む海外に対して通信を行うことができるようになっています。
もちろん中国国内でもクラウドや本社・拠点間においてパソコンからVPN接続を行うことは一般的です。
中国国内においてVPNそのものの通信が禁止されている訳ではありません。
VPN接続を提供できる通信事業者が明確に決められているという話です。
そして、利用者側にとっては、中国で許認可を得た通信事業者によるサービスを利用すること、これが重要です。
先に述べたように「いわゆるVPN」と呼ばれるサービスは中国では認められたサービスではありません。中国で許認可を得た事業者が提供しているものではないからです。
これらの中国で許認可を得た通信事業者が提供する国際回線を借り受けて、その回線を利用したWiFiルーターやSIMのサービスを提供しています。
日本の空港等で借りられるWiFiルーターはこれにあたります。このWiFiルーターのレンタル事業者が中国の正式な通信事業者と何らかの契約を締結し、日本の利用者にサービスを提供しています。
もちろん、ジョイテルが提供する「中国どこでもWiFi」シリーズも同様に中国大手通信会社との提携によりサービスを提供しています。
- 結論1 : VPNは反スパイ法とは関係ない!ただし通信に関する別の法律によって罰せられる可能性はある。中国でも認められた正式なWiFiルーターやSIMを利用すべき。
【重要】反スパイ法のリスクはVPNか否かではない!通信内容が重要
ここまで解説すると、正式なWiFiルーターやSIMを使えば、インターネット上でも日本と同じように行動してもよいのかと勘違いをしてしまう方が多くいらっしゃいます。
VPNを利用しているから大丈夫、もしくは日本のWiFiルーターを借りているから大丈夫、という勘違いのままに中国SNSの微信上で危険な発言をしてしまうことが非常に多いようです。
VPNもWiFiルーターもSIMも単なる通信のための道具です。道具そのものが認められたものでも利用方法が違法なものであれば罰則を受ける可能性があるのは当然です。
日本人が中国現地において犯しがちなインターネット上の危険な行為があります。
1. 中国SNS微信上で、中国政府に対する発言や集会を呼びかけたりすること。日本人が無意識のうちにやりがちなのが自分が見聞きした事故や災害の写真を拡散してしまうこと、これは日本であれば良かれと思ってそうしますが、中国では非常に危険な行為です。中国当局が認めたもの以外の情報を拡散して人民を不安に陥れた、まさに反スパイ法によって処罰されてしまうことになります。
2. 軍事施設や警察、その他官憲に関する施設や人物等を写真に撮ること。珍しいものを見ると何となくスマホを取り出して写真や動画撮影をしたくなるのですが、これも危険です。写真を撮っても良いか否かは周囲の中国人がどのようにしているかを見てからにした方がよいでしょう。
上記反スパイ行為の定義第5項に「敵のために襲撃目標を指示する行為」があります。
これは例えば、重要な施設、政府施設、駅や空港、港湾、発電所等を写真を撮りGPSの位置情報を付与したままアップしてしまうようなこと、つまりこのGPSの場所にミサイルを撃ち込んでくれと海外に漏らすとみなされてしまうということになります。
中国で写真を撮ってこれをアップすることは非常に注意が必要ということになります。
3. 公的な立場にある人と忌憚なき意見交換をすること。もしこれを読んでいる方が中国の役人の方と仲良くなり、SNS上で会話したり会食等をすることになったら?これも注意です。一般的な世界情勢に対する意見を求めたりするとこれもまさに反スパイ法により決められた国家機密又は国家情報の取得にあたる行為とみなされる可能性があります。
今年2023年3月に拘束された日本人もこの行為が該当するとみなされた可能性があるとのこと。
- 結論2 : 反スパイ法のリスクはインターネットや通信の利用内容にあり!全てが監視されている前提で自身の発言や行動には注意が必要。
正しい通信手段を利用し日本のインターネットの利用をお願いします
中国では、VPNや海外への国際回線接続を提供する通信事業者には厳しい許認可があります。
これらの許認可を持たない日本のいわゆるVPNは中国では認められてはいないとお考え下さい。この認められていないVPNを利用することそのものは反スパイ法とは関係がありませんが、通信に関する別の法律により何らかの処罰が行われる可能性はあります。
中国における通信事業の許認可を持つ中国通信会社が提供する国際回線を通じて、中国から日本を含む海外へのインターネット接続を行うサービスがあります。
国際空港で借りられるWiFiルーターやSIM等がこれにあたります。
これらのWiFiルーターを提供する事業者は、この許可された国際回線を「特別回線」等と表現している場合があります。
ジョイテル提供の「中国どこでもWiFi」や「中国データ通信SIM」ももちろんこの許可された国際回線を利用しています。
また、中国の法律でも、GoogleやX(Twitter)、LINE等の利用を禁止している訳ではありません。
その検索サイトやSNSを通じて、反スパイ法に関連するような情報を取得したり、自身から発信したりすることが禁止されているということです。
(情報を取得するということもその対象です。つまり、厳密に言うならYahoo!ニュースから中国に対する批判的な記事を閲覧することも反スパイ的行為と言うこともできます)
本記事を読んでいただいた皆様は、反スパイ法やいわゆるVPNのリスクを理解し、インターネットやSNSの利用には十分注意していただければと思います。
中国でも安心して日本のインターネットを利用したいなら!?
「中国どこでもWiFi」をご検討をお願いします。
中国どこでもWiFiなら正式な中国日本間国際回線を利用し、安心・快適に日本のインターネットが利用できます。
※本記事のイラストは「イラストAC」からダウンロードして利用させていただいています 。