中国はどこまで規制・監視している?SNSで「VPN」等と入力するのは禁止です
「VPN」や「Shadowsocks」はインターネットの通信経路上のデータを暗号化する技術です。
データを暗号化するということにより安心・安全のような気がしますが、実際のところはどうなのでしょうか?
結論から言うと、「VPN」や「Shadowsocks」を使っても、中国国内にサーバがあるサービスを利用する場合はそのデータはグレートファイアーウォールにより監視されている可能性がある、ということになります。
中国SNSの微信(Wechat)や中国にサーバがあるメールのデータはその対象となるということです。
「VPN」や「Shadowsocks」はあくまで通信経路上の暗号化であって、SNSやメールのサーバに到着した時点ではその暗号から通常の文章に戻っているからです。
たまに「VPN」を使っているから大丈夫、と言って微信上で危ない政治的な発言をする人もいますがそれは危険です。
筆者の周りの事例でも以下のようなことが数多くありました。
- 事例1 日本の大手新聞社の方が微信で中国におけるニュース原稿を送ったところ、その後、数時間に渡り微信が使えなくなった。
- 事例2 中国国内のVPNプロバイダーがサポートのために微信でお客様からの連絡を受け付けていた。そのメッセージには「VPN」というキーワードが多数含まれることになり、それが当局に目を付けられて逮捕されてしまった。
筆者が参加する微信のグループチャットの中で、日本人が悪気も無く政治的な発言をすると、必ず「微信上ではこのような政治的な発言は止めましょう。全て監視されています。」とたしなめる声が上がります。中国現地の方も微信上での監視についてはわかっているようです。
その他、仲の良い中国人とメッセージ交換する場合でも「それは「敏感詞」だからここ(微信)では止めろ!」と注意を受けることもよくあります。
「敏感詞」とは聞きなれない言葉だが、要するに中国の当局が敏感に反応することからそう呼ばれる言葉です。
日本でも話題になった「くまのぷーさん」とか「天安門事件」等が代表的です。「VPN」や「Shadowsocks」等のITキーワードもこれにあたります。
数年前までは、これらのSNSを人が目視で巡回してキーワードを見つけるようなことも行われていたようです。
もちろん今ではそれを中国お得意のAIが担っており、微信では、データ上の敏感詞をリアルタイムで検索するためだけに巨大なデータセンタが構築されているという噂もあるのです。
微信やメールの中で「VPN」や「Shadowsocks」のキーワードを入力するのは止めましょう。
どうしても使う場合は「V#N」とか「Sh@dowsocks」のように伏せ字しましょう。
ここまで読んで、じゃあ、中国の中からは買い物の時のクレジットカード情報や日本の会社のメールも全て監視されてしまうの?と思った方。
ご安心ください。
基本的にはパソコンのブラウザやメールソフトが暗号化して日本のサーバまで通信するので安心です。「VPN」や「Shadowsocks」を使えば更にもう一度暗号化がされ、通信経路上では強固なセキュリティを確保していると言えます。中国の監視システム・グレートファイアーウォールがあなたのクレジットカード情報を読み取るということはありません。(繰り返しですが、これは中国国外にサーバがあるサービス(日本の楽天とかAmazon等)やメールサーバ(.jp等のメールアドレス)を利用する場合の話です)
安心して日本のサービスを利用したりショッピングをお楽しみください。
※※「JOYTEL」の立場について
JOYTELは、中国における各種規制について賛成でも反対のいずれの立場でもありません。
あくまで「その国の法律に基づいて」行動し、サービスを利用するということが正しいと考えています。
価値観は国毎に異なるものであり、それは尊重されるべきことです。
ちなみに、中国国内でアメリカ等の巨大ITサービスが利用できないことは、政治的・倫理的には様々な意見があろうかと思いますが、ビジネス的にはまったく正しい判断であったと思います。
2010年代前半において、GoogleやFacebookを受け入れて自由競争をさせていたら中国のIT産業はどうなっていたでしょうか?まったくの仮定ですが、中国の百度(Baidu)やTencentは現在のようには成長していなかったかもしれません。
自動車や農産物等の場合なら日本でもアメリカでも自国への輸入を制限するのですから、ITサービスだけは自由に受け入れなければならない道理も無いと考えています。